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採用ブランディングとは?中小企業が社員の声で「選ばれる理由」をつくる進め方

こんにちは!株式会社レガロニコ代表取締役の米森です。

「採用ブランディングが大事だと聞くけれど、大きな会社がやるものでは?」「うちには知名度も、特別な制度もない」。中小企業の社長から、こうした声を聞くことがあります。

採用ブランディングは、ロゴや動画をつくることではありません。中小企業にとっての採用ブランディングは、「この会社で働く理由」を、社員の声という事実の言葉で決めて、求人票・採用ページ・面接で同じように伝え続けることです。知名度がなくても、すぐに始められます。

先に結論をお伝えします。中小企業の採用ブランディングは、次の3つから始めます。

  • 経営者と社員に聞いて、「この会社で働く理由」を事実の言葉で集める

  • いいことだけでなく、きついことも決めて、正直に伝える

  • 求人票・採用ページ・面接で、同じ言葉を使い、数字で効果を確かめる

この記事では、採用ブランディングの基本を整理したうえで、レガロニコが採用支援で行っている進め方と、レガロニコ自身の社員がIndeedに書いたクチコミを例に、中小企業が「選ばれる理由」をつくる手順をお伝えします。

最初にやることは、次の4つです。詳しいやり方は4章で紹介しています。

  • 今出している求人の表示回数・クリック率・応募数を控えておく

  • 社長が、手順1の5つの問いに答え、社員アンケート(6問)を全員に配る

  • 集まった答えを並べて、働く理由を3つにしぼる

  • 求人の最初の数行を書き換え、控えておいた数字と比べる

1. 採用ブランディングとは

採用ブランディングとは、「この会社で働きたい」と思ってもらえるように、働く場所としての自社の印象を、時間をかけて育てる取り組みです。どんな会社で、どんな人が、どんな思いで働いているのか。それを求職者に正しく知ってもらい、共感した人に応募してもらうことを目指します。その中心になるのが、この会社で働くことで得られる価値(EVP:従業員価値提案)を言葉にすることです。この記事では、これを「働く理由」と呼びます。

採用マーケティング・採用広報との違い

似た言葉がいくつかありますが、役割で分けると整理できます。

言葉

役割

ひと言でいうと

採用ブランディング

働く場所としての自社の印象を育てる

何を伝えるか(中身)

採用マーケティング

採りたい人に届けて、応募・入社・定着までを数字で直す

誰に、どこで、どう届けるか(届け方)

採用広報

職場や社員の様子を発信する

伝えるための手段の1つ

求人広告

募集している仕事を、探している人に届ける

見つけてもらうための土台

採用ブランディングと採用マーケティングは、どちらが先というより、中身と届け方の関係です。伝える中身があいまいなまま届け方だけを工夫しても、求職者の心には残りません。逆に、中身を決めても届けなければ、誰にも知られません。採用マーケティングの考え方と進め方は、採用マーケティングとは?中小企業が数字で進める始め方で詳しく紹介しています。

採用ブランディング(何を伝えるか:働く理由、いいこと・きついこと)と採用マーケティング(誰に・どこで・どう届け、数字で直すか)を組み合わせて、合う人に選ばれ、入社後も続けてもらう関係図

中小企業は、仮の「働く理由」から始める

大きな会社のように、時間とお金をかけて会社の印象を育てるのは、中小企業には難しいこともあります。そこでおすすめしているのが、本格的なブランディングは後回しにして、まず今の求人の数字を見たうえで、「この会社で働く理由」を仮の言葉として決めることです。その言葉を求人で使い、反応を数字で確かめながら、少しずつ育てていきます。

中途採用やパート採用でこそ効く

採用ブランディングの解説は、新卒採用や大きな会社の例が中心になりがちです。ですが、中小企業の多くが行っている中途採用やパート採用でこそ、効く場面があります。

中途やパートで仕事を探す人の中には、前の職場で人間関係や働き方に悩んだ経験を持つ人もいます。そうした人の中には、給与の数字だけでなく、「どんな人と、どんな雰囲気で働くのか」「今度こそ長く続けられるか」を気にする人も少なくありません。社員の声で職場の実際を伝えることは、こうした不安に直接答えることになります。

2. 中小企業にこそ、採用ブランディングが必要な理由

条件だけで比べられると、選ばれにくい

厚生労働省の発表では、2026年8月の有効求人倍率(季節調整値。仕事を探している人1人あたりの求人の数)は1.18倍、新規求人倍率は2.06倍でした(厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」、2026年10月2日公表)。仕事を探している人より求人のほうが多い状態です。求職者はいくつもの求人を見比べるので、給与や休日といった条件だけで比べられると、知名度や体力のある会社が有利になりがちです。

正社員に限ると1.00倍で、全体の1.18倍より低くなります。

中小企業が条件以外で選ばれるには、「この会社で働くと、どんな毎日になるのか」「どんな人たちと働くのか」が伝わっている必要があります。それを決めて伝えるのが、採用ブランディングです。

中小企業だからこそ伝えられることがある

給与や知名度では大きな会社に負けていても、規模が小さいからこそ伝えられることがあります。たとえば次のようなことです。ただし、どれも「自社の事実なら」という条件つきです。社員の声で確かめられたことだけを使います。

伝えられることの例

求職者にとっての意味

社長や先輩との距離が近い

困ったときにすぐ相談できる。考えが直接伝わる

任される仕事の範囲が広い

早くから色々な仕事を経験できる

地元で通いやすい

通勤の負担が少なく、生活と両立しやすい

働き方の相談がしやすい

家庭の事情などに合わせた働き方を話し合える

お客様の顔が見える

自分の仕事が誰の役に立っているかが分かる

メリットと、先に知っておきたい負担

採用ブランディングに取り組むと、次のような良いことが期待できます。

  • 条件だけでなく、会社の考え方や雰囲気に共感した人から応募が来やすくなる

  • 入社前と入社後のずれが減り、早く辞めてしまう人を減らしやすくなる

  • 社員が自社の良さを言葉にすることで、今いる社員が会社を見直すきっかけになる

一方で、負担もあります。社長だけでなく社員の協力が要ること、すぐには結果が見えにくいこと、そして発信した内容と実際の職場がずれていると、かえって信用を失うことです。だからこそ、中小企業の採用ブランディングは、飾った言葉ではなく、事実の言葉から始める必要があります。

3. 中小企業の採用ブランディングは「事実の言葉」から始める

飾った言葉は、入社後のずれを生む

「アットホームな職場」「やりがいのある仕事」「成長できる環境」。こうした言葉は、どの会社の求人にも書けてしまいます。どの会社にも書ける言葉では、比べられたときに選ばれる理由になりません。

さらに怖いのは、実際とずれた言葉で入社した人が、「聞いていた話と違う」と感じて早く辞めてしまうことです。採用ブランディングの目的は、応募を増やすことだけではなく、合う人に入社してもらい、続けてもらうことです。入社後のずれを防ぐ考え方は、早期離職を防ぐにはでも紹介しています。

求職者は、求人の外でも会社を確かめている

求人を見て興味を持った人は、会社名で検索して、採用ページやクチコミ、地図の口コミなどを確かめることがあります。求人では「残業ほぼなし」と書いてあるのに、クチコミには「繁忙期は忙しい」とあれば、求職者はどちらを信じればよいか迷います。

採用ブランディングでいう「印象」は、会社が発信した言葉だけでなく、こうした外の情報も含めた全体で決まります。だからこそ、求人の言葉は、社員が実際に感じていることとそろえておく必要があります。

事実の言葉は、社員の声の中にある

では、どこから事実の言葉を集めればよいのでしょうか。答えは、今いる社員の声です。社員が実際に入社を決めた理由、働いて感じている良さ、そして大変なことは、外から考えた宣伝文句よりもずっと具体的で、信用されます。

レガロニコ自身の例を紹介します。レガロニコの社員は、Indeedの会社ページ(求人とは別に、会社の情報や社員のクチコミがまとめて表示されるページ)にクチコミを書いています。Indeedには表記の違う2つの会社ページがあり、あわせて4件のクチコミが掲載されています((株)Regalonicoのページ、株式会社Regalonicoのページ、2026年10月3日時点)。そこには、たとえば次のような声があります。

  • 全くの未経験から入社し、毎日が学びと発見で充実していること

  • 入社時に「あなたの人生に責任をもちます」という言葉をかけられ、心を動かされたこと

  • ミスをしたときに責められず、次にどう活かすかを一緒に考えてもらえること

そして、良いことだけではありません。2件のクチコミが、毎日決まった業務を繰り返す仕事ではなく、自分で考えて行動しないと仕事が前に進まないこともある、という大変な面に触れています。そのうち1件には、細かいマニュアルがすべて整っているわけではない、とも書かれています。また、項目ごとの星の評価には、給与と福利厚生のように、ほかより低めの項目もあります。こうした声や評価も、求職者にとっては判断の材料になります。社長が「うちの良さはこれだ」と思っていることと、社員が感じていることを突き合わせることが、採用ブランディングの出発点です。

4. 中小企業の採用ブランディングの進め方:5つの手順

ここからは、レガロニコが採用支援で行っている進め方をもとに、中小企業が自社で取り組める5つの手順を紹介します。始める前に、今出している自社の求人と、同じ地域・同じ職種の他社の求人を何件か並べて、条件と最初の数行を見比べておきます。比べられる相手を知っておくと、条件以外で伝えるべきことが見えやすくなります。

中小企業の採用ブランディングの5つの手順。1経営者に聞く、2社員に聞く、3働く理由を3つの言葉に、4いいことときついことを決める、5同じ言葉で伝える。最後に数字と声で確かめる

手順1:経営者に聞く

最初に、社長の考えを言葉にします。レガロニコの求人解決AIでも、求人票を書く前に、経営者への深掘りインタビューを行っています。社長が頭の中で当たり前に思っていることほど、外の人には伝わっていないものです。次のような問いに、1つずつ答えてみてください。

  • なぜこの事業をしているのか。お客様のどんな役に立っているのか

  • これから会社をどうしていきたいか

  • どんな人と一緒に働きたいか。逆に、どんな人とは合わないか

  • 入社した人に、いちばん大事にしてほしいことは何か

  • 条件面で他社に負けている所と、それでも選んでほしい理由は何か

「合わない人」と「負けている所」まで言葉にしておくのがポイントです。ここがあいまいだと、誰にでも当てはまる求人になり、合わない人の応募や、入社後のずれにつながります。

手順2:社員に聞く

次に、社員の声を集めます。レガロニコの支援では、全社員へのアンケートと、社員へのインタビューを行っています。アンケートは名前を書かなくてよい形にすると、本音が出やすくなります。聞くのは、次のようなことです。

  • 応募する前に、迷ったことや不安だったこと

  • この会社に決めた理由

  • 働いてみて良かったこと

  • 入社前に聞いていた話と違ったこと

  • 大変だと感じること

  • 友人にこの会社をすすめるとしたら、何と言うか

答えに「雰囲気がいい」「人がいい」のような言葉が出てきたら、どんな場面でそう感じたのかまで聞きます。「ミスをしたとき、責めずに次の手を一緒に考えてくれた」のような具体的な場面が、求人に書ける事実の言葉になります。

社内で聞くのに加えて、Indeedなどの会社ページに社員のクチコミがあれば、それも材料になります。求職者がすでに目にしている外の声と、社内で聞いた声がそろっているかも確かめておきます。

社員アンケートの進め方

社員アンケートは、次のように進めると集めやすくなります。

決めること

おすすめ

対象

パートや入社したばかりの人も含めた全員。入社の理由がまだ新しい人の声は特に役立つ

名前

書かなくてよい形にして、本音を出しやすくする

質問の数

上の6問程度にしぼる。多いと答えが短くなる

回答の期間

1〜2週間。社長から目的を一言伝えてから始める

まとめ方

同じ言葉や似た場面が何回出てくるかを数え、具体的な場面が書かれた答えに印をつける

答えの中に、会社にとって耳の痛い声が出てくることもあります。それは、求人や職場を良くするための大事な材料です。責めたり、書いた人を探したりせず、そのまま受け止めます。

手順3:「この会社で働く理由」を3つの言葉にまとめる

集めた社長の声と社員の声を並べ、重なっている所を探します。重なった所が、その会社の「働く理由」の芯です。1章で触れたEVPにあたります。

たとえば、レガロニコの社員がIndeedに書いた4件のクチコミからは、次のような働く理由の候補が読み取れます。

社員の声(クチコミの要旨)

読み取れる「働く理由」

出てくる件数

全くの未経験や、業界未経験から入社した

未経験からでも育つ

3件

ミスを責めず、次にどう活かすかを一緒に考えてくれる

失敗を責めず、一緒に考える

1件

スタッフの人生やお客様のためになるかに、本気で向き合う

人とお客様に本気で向き合う

3件

件数が少ない声でも、社長の考えや手順1の答えと重なっていれば、働く理由の候補にしてかまいません。逆に、件数が多くても社長が大事にしたいことと合わなければ、もう一度話し合います。

3つ程度にしぼるのは、多すぎると覚えてもらえず、場所ごとに言うことがばらばらになりやすいからです。どれも、社員の声という事実に支えられていることが大切です。

飾った言葉を、事実の言葉に言い換える

働く理由をまとめるときは、形容詞ではなく、場面で書くのがコツです。どの会社にも書ける言葉を、その会社でしか書けない言葉に言い換えます。

どの会社にも書ける言葉

事実の言葉に言い換えた例

アットホームな職場

ミスをしたとき、責めずに次の手を一緒に考える

成長できる環境

未経験で入社した人が、1年でさまざまな仕事を経験している

風通しがいい

やってみたい仕事を伝えると、状況に応じて携わらせてもらえる

やりがいのある仕事

お客様に本当にためになる提案かを、問い続けながら進める

右側の例は、レガロニコの社員のクチコミをもとにした言い換えです。自社で使うときは、自社の社員の声から同じように言い換えてください。

手順4:「いいこと」と「きついこと」を両方決める

働く理由が決まったら、それと表裏一体の「きついこと」も決めます。レガロニコの社員のクチコミにも、自分で考えて行動しないと仕事が前に進まないことがある、細かいマニュアルがすべて整っているわけではない、という声がありました。これは、「未経験からでも育つ」という働く理由の裏側にある大変さです。

レガロニコが支援先と作る「採用基準シート」には、「面接で必ず伝えること」という欄があります。良いところだけでなく、繁忙期の忙しさや、入社後に必要な勉強など、きついところも先に伝えるための欄です。採用基準シートは、誰を採るかを判断するためのものです。この後紹介する「言葉を決める1枚のシート」は、何を伝えるかをそろえるためのものです。採用基準シートでは、次のような項目を決めます。

項目

決めること

採用の目標

何人、どんな雇用形態で、いつまでに採るか

どんな人に来てほしいか

必須の条件と、あると嬉しい条件を分ける

面接で必ず伝えること

いいことと、きついことの両方

判定の表し方

「特に推奨/基準クリア/要確認/見送り」のように、次に進めるかの段階を決めておく

きついことを先に伝えると、応募が減るのではと心配になるかもしれません。ですが、それを知ったうえで応募してくる人は、入社後に「聞いていた話と違う」と感じにくくなると考えています。条件そのものに課題がある場合は、伝え方で隠すのではなく、条件の見直しも考えます。

手順5:求人票・採用ページ・面接で、同じ言葉を使う

最後に、決めた言葉を、求職者と出会うすべての場所で同じように使います。場所ごとに言うことが違うと、求職者は混乱し、信用されにくくなります。

働く理由(3つ)ときついことを、求人票・採用ページ・Indeedなどの会社ページ・面接や職場見学・入社後のすべての場所で同じ言葉で伝える図

場所

伝えること

求人票

働く理由を、職種名の後や最初の数行に入れる。きついことも本文に書く

採用ページ

社員の声や、働く理由を支える具体的な場面を写真や文章で見せる

Indeedなどの会社ページ

会社の情報を整え、社員のクチコミがあれば、内容と求人がずれていないか確かめる

面接

働く理由と、面接で必ず伝えることを、社長や現場の人の言葉で話す

入社後

聞いていた話と違ったことがないかを聞き、言葉を見直す

求人票の具体的な直し方は応募が来ない求人票の改善で、採用ページを外部に頼むときの選び方は採用サイト制作会社の選び方で紹介しています。給与に固定残業代を含める場合は、基本給・固定残業代の金額と時間・超えた分の支払いを分けて書くことが、職業安定法にもとづく厚生労働省の指針で求められています(詳しくは固定残業代の求人票の書き方)。正直に分けて書くことも、信用される採用ブランディングの一部です。

求人票の書き出しを、働く理由で始める

求人票で働く理由を伝えるなら、求職者が最初に読む数行に入れます。たとえば、次のような違いです(レガロニコの社員のクチコミをもとにした例文です)。

書き方

例

よくある書き出し

アットホームな職場で、一緒に成長しませんか。未経験歓迎です。

働く理由で始める書き出し

未経験から入社した先輩が、この1年でさまざまな仕事を経験しています。ミスをしても責めずに、次にどう活かすかを一緒に考えます。そのかわり、細かいマニュアルがすべて整っているわけではないので、自分で考えて動く場面があります。

後者は、いいことときついことの両方が、具体的な場面で書かれています。読んだ人は、自分がこの職場で働く姿を想像しやすくなり、合う人ほど応募しやすくなります。

言葉を決める1枚のシート

ここまでの手順で決めたことは、1枚の紙にまとめて、社長・面接をする人・現場の人で共有しておくと、場所ごとに言うことがずれにくくなります。

欄

書くこと

採りたい人

どんな人に来てほしいか。合わない人はどんな人か

働く理由(3つ)

社長と社員の声が重なった言葉

それを支える事実

社員の声や、具体的な場面

きついこと

面接で必ず伝えること

使う場所

求人票、採用ページ、面接で、どの言葉をどこに書くか

見直す日

入社した人の声を聞いて、言葉を見直す時期

たとえば、レガロニコの事務スタッフの採用に当てはめると、次のような書き方になります(クチコミと求人の内容をもとに、採りたい人や見直す日などを加えた記入例です)。

欄

記入例

採りたい人

未経験でも、自分で考えて動くことを楽しめる人。決まった作業だけを続けたい人とは合いにくい

働く理由(3つ)

未経験からでも育つ/失敗を責めず、一緒に考える/人とお客様に本気で向き合う

それを支える事実

未経験から入社した社員が、1年でさまざまな仕事を経験している(社員のクチコミ)

きついこと

細かいマニュアルがすべて整っているわけではない。自分で考えて動かないと仕事が進まない場面がある

使う場所

求人の職種名と最初の数行、採用ページの社員の声、面接での説明

見直す日

新しく入った人には入社30・60・90日に聞く。言葉そのものは年に1回まとめて見直す

AIで言葉を整理するときの注意

社員アンケートの答えが多いときは、AIを使って似た答えをまとめたり、言い換えの候補を出したりすると、作業が早く進みます。

ただし、AIは、実際にはない制度や、社員が言っていないことを、もっともらしく書き足してしまうことがあります。AIに任せてよいのは「整理」と「言い換えの候補」までです。最後に残す言葉は、必ず社員の実際の答えと照らし合わせ、事実かどうかを人が確かめます。

5. 採用ブランディングの効果を、数字と声で確かめる

採用ブランディングは「効果が見えにくい」と言われます。ですが、確かめる場所はあります。採用マーケティングの記事で紹介した「見られる→響く→応募→定着」の段階に当てはめると、次のように見られます。

段階

確かめること

確かめ方

見られる

求人が、採りたい人の目に入っているか

求人の表示回数

響く

働く理由を入れた求人が、開かれているか

クリック率(求人が表示された回数のうち、開かれた割合。Indeedなどの管理画面で見られる)を、言葉を変える前後の同じ期間で比べる

応募

応募した人が、働く理由に共感しているか

応募率(応募数÷求人が開かれた数)と、応募時のアンケートや面接で聞く「応募の決め手」。「なぜ当社を選んだのか」の答えに、決めた言葉が出てくるか

定着

入社後に、聞いていた話と違うと感じていないか

入社30日・60日・90日に「聞いていた話と違ったこと」を聞く

数字だけでなく、応募者や新しく入った人の言葉に、自分たちが決めた働く理由が出てくるかを見るのがポイントです。出てこない場合は、言葉が届いていないか、言葉そのものが事実とずれている可能性があります。段階ごとの数字の見方は、採用マーケティングとは?中小企業が数字で進める始め方で詳しく紹介しています。

応募者アンケートで「応募の決め手」を聞く

レガロニコの支援では、応募した人に事前のアンケートをお願いすることがあります。採用ブランディングの効果を確かめるなら、次のような質問を入れておくと便利です。

  • この求人のどこを見て、応募しようと思いましたか

  • ほかにどんな会社と比べていますか

  • 応募する前に、不安だったことはありますか

1つ目の答えに、決めた働く理由が出てくれば、言葉が届いているサインです。3つ目の答えは、次に求人で先回りして答えるべき不安の候補になります。

6. 中小企業の採用ブランディング事例

会社の思いや雰囲気を伝えて、応募の理由が変わった会社

レガロニコのお客様インタビューで、ホームページを新しくした株式会社WIN様の事例を紹介しています。リニューアル前は条件面を理由とした応募が多かったのが、リニューアル後は会社の思いや魅力、職場の雰囲気に共感して応募する人が増えました。お客様からは「面接の前から『私はここで働きたい』という気持ちを持って来られる方が多い」という言葉もいただいています(株式会社WIN様のインタビュー)。この記事の手順をそのまま行った事例ではありませんが、会社の思いや雰囲気を伝えると、応募の理由そのものが変わることがある例です。

レガロニコ自身:社員の声と、求人の言葉を並べてみる

社員の声と求人の言葉がそろっているかは、並べてみると確かめられます。たとえばレガロニコのクチコミには「AIを活用する機会が多い」という声があり、事務スタッフの求人の職種名にも「AI積極活用」と入っています。働き方を、求人の一覧の段階で伝えている例です。一方で、クチコミに出てくる「未経験からでも育つ」「失敗を責めず、一緒に考える」といった働く理由が、求人の本文でどこまで伝わっているかは、手順5の表に沿って見直す余地があります。

支援先:「面接で必ず伝えること」を決めた例

レガロニコが支援先と作る採用基準シートには、「面接で必ず伝えること」の欄があり、会社に合わせて内容を決めます。会社名は出せませんが、内容の例を紹介します。

たとえば、ある教習所の採用基準シートでは、「繁忙期と閑散期の差が大きく、繁忙期は休みが少ないこと」「入社後に、国家資格の勉強があること」を、面接で必ず伝えることにしています。

求職者にとっては、きついことかもしれません。ですが、これを面接の前に知ったうえで進む人は、入社してから「聞いていた話と違う」と感じにくくなると、私たちは考えています。いいことと同じくらい、きついことを決めて伝えることが、合う人に来てもらうための近道だと考えています。

支援先:選考の流れで、職場を見てもらう例

ある福祉の事業所では、見学のあとに面接をする流れにしています。見学の場で入社を希望される方が多いそうです。実際の職場と人を見てもらうことも、事実を伝える方法の1つです。

7. 採用ブランディングを伝える場所と、手間

伝える場所は、全部に取り組む必要はありません。まずは求人票と面接で言葉をそろえ、続けられる範囲で広げていきます。

場所

向いていること

手間

求人票

多くの求職者が最初に目にする。働く理由ときついことを書く

小さい

面接・職場見学

社長や現場の人の言葉で、働く理由を直接伝える

小さい

採用ページ

社員の声や具体的な場面を、写真と文章でくわしく見せる

中くらい

Indeedなどの会社ページ

会社の情報と、社員のクチコミを見てもらう

小さい

SNS

普段の職場の様子を続けて見せる

大きい(続ける手間)

動画

職場の雰囲気や、人の話し方をそのまま伝える

大きい

社員からの紹介

社員が自分の言葉で会社をすすめる

小さい〜中くらい

8. 中小企業の採用ブランディングで、よくある失敗

ロゴや動画づくりから始めてしまう

見た目を整えることは大切ですが、伝える中身が決まっていないと、何を見せればよいかが決まりません。先に「働く理由」の言葉を決めてから、見せ方を考えます。

社長の思いだけで決めてしまう

社長の思いは出発点ですが、それだけで決めると、社員が感じていることとずれることがあります。社員の声と重なっているかを必ず確かめます。

いいことしか書かない

良いことだけを並べると、どの会社も同じに見え、入社後のずれも生まれやすくなります。きついことも、働く理由と一緒に伝えます。

場所ごとに言うことが違う

求人票では「残業ほぼなし」、面接では「繁忙期は忙しい」のように、場所ごとに言うことが違うと、信用を失います。決めた言葉と伝える事実を「言葉を決める1枚のシート」にまとめ、全員で共有しておきます。

クチコミの内容を、会社が指示してしまう

社員にクチコミを書くよう求めたり、書く内容を会社が指示したり、良い評価だけをお願いしたりすると、本当の声ではなくなり、かえって信用を失うおそれがあります。書くかどうか、何を書くかは、社員本人にまかせます。

入社後の受け入れが、伝えた言葉と合っていない

「未経験からでも育つ」と伝えたのに、入社後に教える人も時間もなければ、言葉はうそになります。採用ブランディングは、採用の場面だけで完結しません。伝えた言葉どおりに、入社後の受け入れを整えることまでが含まれます。

一度決めて、そのままにしてしまう

会社も社員も変わっていきます。入社した人の声や、応募者の反応を見ながら、言葉が今も事実かどうかを年に1回は見直します。

9. よくある質問と相談先

Q. 社員が数人しかいない会社でも、採用ブランディングはできますか?

できます。社員が少ない会社ほど、社長と社員の距離が近く、一人ひとりの声がそのまま会社らしさになります。ただし、社員が数人だと、名前を書かないアンケートでも誰の答えか分かりやすくなります。その場合は、社長以外の人や外部の人が聞き役になる、良かったことから先に聞く、などの工夫で本音を言いやすくします。

Q. 新卒採用でも、同じ進め方でいいですか?

基本の考え方は同じです。ただし、新卒の人は働いた経験がないため、仕事の中身や1日の流れ、入社後の育て方を、中途採用より具体的に伝える必要があります。若手社員の声は、新卒の人が自分の数年後を想像する材料になります。

Q. 採用マーケティングと採用ブランディング、どちらから始めればいいですか?

どちらか一方ではなく、中身と届け方の関係です。中小企業なら、まず今出している求人の数字を見て、手順1〜3で「働く理由」を仮の言葉として決めます。それを今の求人で使い、数字で反応を確かめながら育てる流れがおすすめです。本格的に会社の印象を育てる取り組みは、そのあとで構いません。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

採用ブランディングに決まった料金はありません。社長と社員に話を聞き、求人票と面接で言葉をそろえるところまでなら、社内の時間だけで始められます。採用ページや動画をつくる場合は、制作の費用がかかります。見積もりを比べるときは、話を聞いて言葉を決める部分と、制作物をつくる部分を分けて確かめます。

Q. どのくらいで効果が出ますか?

求人の言葉を変えた効果は、変えたあとに一定の表示と応募が集まれば、クリック率や応募の決め手で確かめられます。一方、会社の印象が広く知られるまでには時間がかかります。短く確かめられることと、長く続けることを分けて考えます。

Q. ロゴやホームページを作り直さないといけませんか?

必ずしも必要ではありません。まずは今ある求人票と面接で言葉をそろえることから始めます。そのうえで、伝えたい中身に対して今の採用ページが足りないと分かったら、作り直しを考えます。

Q. 社員から否定的な声が出てきたら、どうすればいいですか?

まずは受け止めます。職場の課題として直せることは直し、すぐに直せないことは、きついこととして正直に伝えるかを考えます。否定的な声を隠して求人を書くと、入社後のずれにつながります。

Q. Indeedなどにクチコミがない、または厳しいクチコミがある場合は?

クチコミがなくても、社内で集めた社員の声があれば採用ブランディングは始められます。厳しいクチコミがある場合は、その内容が今も事実かを確かめ、改善したことがあれば、求人や採用ページで具体的に伝えます。クチコミの内容を消したり、書き換えを頼んだりするのではなく、職場と伝え方の両方を見直すことが大切です。

採用ブランディングを相談したいときは

自社だけで社員の声を集めて言葉にするのが難しい場合は、外部の力を借りるのも一つの方法です。レガロニコの「求人解決AI」は、採用代行サービスです。経営者への深掘りインタビュー、全社員アンケート、社員インタビューをもとに求人票を作り、掲載設定から運用のスタートまでをまとめて代行します。ご相談は無料です(求人解決AIのサービスページ)。

※2章の有効求人倍率は、厚生労働省の公表値です。3〜6章で紹介した社員の声と評価は、2026年10月3日時点でIndeedのレガロニコの会社ページ(2つ)に掲載されている内容です(声は要旨)。

この記事を書いた人

米森良偉の写真

株式会社レガロニコ 代表取締役

米森良偉

2018年よりWeb制作会社で、集客や採用のマーケティング支援に携わる。2021年に「Regalonico」を創業し、2022年に株式会社Regalonicoを設立。静岡を拠点に、中小企業の「人が足りない」を解決するため、採用支援サービス「求人解決AI」、採用サイト・ホームページ制作を行っている。これまで300社以上の中小企業を支援。

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